Masked ball











「…なんで俺が…」
こんな格好をしなくちゃならないんだ、と叫びたいのをこらえつつデュランは外へと出る、賑やかな室内とは裏腹にこちらはいたって静かだ、肌に心地よい夜の空気がまとわりつく。


今日は英雄王主催の舞踏会だ、ただの舞踏会ではなく頭にちゃっかりと『仮面』が付く、その昔、身分をも踏み越えて一組の男女が踊るため、という単なる上流階級のお遊びだ、それを今年になって、平和になった事だしと英雄王が世界を代表して開いた、


代表したなだけあって世界各国から大勢の人が訪れ、城どころか町中さえも賑わっている、前日に明日は警備が大変そうだなと肩を落としていたら英雄王からお呼びがかかった、

『デュラン、明日の事だが…』
『はい、兵の準備は万全です、安心して…』
『いや、わしが言いたいのは、明日の舞踏会にお前も出るんじゃ』
『…は…?』
『お前は仮にもマナの剣を携え世界を救った勇者、出るのが普通じゃろう』

なんともまぁ向こうの(屁)理屈であっけなく引き受けてしまったものだとデュランはいまさら後悔する、しかし、警備の仕事が無かった所為か久々に仲間に会うことも出来た、ケヴィンはビーストキングダムから、シャルロットはウェンデルからそれぞれ代表で訪れている、しかし、二人ともまだ子供なのか早々に疲れて与えられた部屋で休んでいる、ふと時計を見ると12時過ぎ、自分も良くがんばって顔を出した方だと思う、ここら辺で帰っても良いだろうか。


「第一明日もあるんだよな…」
そう言って東屋の中の椅子に腰掛ける、
「いっそ隕石でも落ちてくれれば中止になるのに…」
ぶつぶつと勇者にしては物騒な事を言う、その時だった。


「貴方もお疲れですか?」
やんわりと優しい声で声をかけられる、驚いて振り返ると白いドレスを着た少女が同じく白い仮面を被って立っていた。
「ああ、お前もか?」


普通ならどういう身分のものかわからないのだから迂闊に話せないが、デュランはお構い無しにいつも使っている口調で話しかける、
「ええ、私、ああいう所は少々苦手なんです」
仮面だからわからないが、おそらく少女は笑っただろう、
「おまえ、普通に話してもいいんだぞ?」
敬語口調を不自然に思ったのかデュランは少女に話しかける、少女はいつの間にかデュランの向かい側に座っていた、よくもあんな動き辛そうなドレスで普通に動けるものだと感心する。


「すみません、いつもこの話し方で通していますので」
普段からこんな話し方なのかとデュランは口をあけて少女を唖然とした表情で見る、しかし、デュラン自身も仮面をつけていたので少女に悟られる事は無かっただろう。
「明日もあるんですよね」
うんざりだという口調で少女は話す、


自分と同じで本当にああいうところが苦手なんだなと親近感が沸く。
「うんざりだけど、同志がいると心強いな」
「同志…ですか?」
きょとんとした口調で少女がデュランに聞く、仮面に隠れ表情が見えない所為か向こうの様子は全て口調やしぐさに頼るしかない、
「お前もこういうところ苦手なんだろ?俺も苦手なんだよ」
「ああ、ええ、そうですね、確かに心強いですわ」
納得が言ったように少女はほっと息をつく、


しばらくとりとめの無い話をして1時になった頃、デュランはいい加減帰らないと明日の警備の仕事に響くと思い席を立つ、
「そんじゃ、悪いけど一足先に帰らしてもらう」
「今日の舞踏会に出席の代わりに明日の午前中に警備の仕事とは大変ですね」
気遣いに感謝してその場を後にしようとした、
「明日も来るのか?」
ふと思いつき、振り返って少女に聞く、
少女は即答して答えた、
「ええ、呼ばれているのですから、出席はしないと行けませんわ」
「そっか」
「また、明日会えるといいですね」
そう言って、二人は別れた。


翌日、城の警備で与えたれた箇所にデュランはいた、ぼんやりと空を眺めている、
(昨日のヤツ…どっかで会った様な気が…)
しかし、その考え事はケヴィンを引き連れてやってきたシャルロットの声に引き裂かれる。
「やっほ〜元気でちか?デュランしゃん」
こう見えて15歳と頭では思ってても話し方や体格と言い、まだ幼い少女の印象を受ける、が、それは外見だけで、中身は立派に『オバサン』だ。人の噂話が大好きで首を突っ込んだり突っ込まなかったり、精神年齢はおそらく誰よりもいっているだろう。


後ろでおどおどとデュランの様子を伺っているのは我侭なシャルロットに散々引き連れまわされている哀れな仲間、
「デュラン、久々」
「二人とも何しに来たんだ?」
旅でも保護者役だったデュランは二人の行動を注意する、


しかし、それは無意味だったようで、シャルロットが何か企んでいる様子でデュランに話しかけた。
「見たでちよ〜?」
「何を?」
もったいぶって話すシャルロットにデュランは苛立ちを覚える、
「昨日の夜中!女の人と一緒にいたでちね?!」
昨日、少女とあって話していた所をシャルロットは見ていたのだろうか、そんなに夜中ではないと思ったがシャルロットにとっては真夜中にも近かったらしい。


「シャルロットは見たでち、アンタしゃんよく好きな人がいるってのに…」

ぶほっ!

シャルロットの言う事に思わずデュランは咳き込んだ、
「…お…おい、なんて言った?」
眉を引きつらせながら物凄い形相でデュランはシャルロットに問い詰める、
「だーかーらー!はっきりしんしゃい!デュランしゃんあの人のこと好きなんでちょう?」


あの人…と言うのは旅の途中に出会った少女だ、

自分の城を取り返そうと一生懸命仲間を引き連れ、

あと少しでボスの所で自分達に倒すように頼み込んできた少女、

その少女に抱く思いは別れてからも消える事は無く、




今でもどこかに残っている、




「……………………………………」
沈黙が肯定した答えはシャルロットを満足させるには十分だった、
「ふっふーん、シャルロットは何でもお見通しでち!」
「…シャル、デュランの様子が…」
おかしい、とケヴィンが言うには少し遅すぎた、
「てめーらさっさとどっかいって遊んでこい!!」

怒声は城の外まで聞こえたと言う、




ろくに疲れの取れぬまま迎えた夜の舞踏会、最初から参加する気は毛頭無く、早々にデュランは昨日の東屋に向かった、出迎えたのは白い幽霊…ではなく昨日と同じ白いドレスの少女だった、服がふんわりしている所為か彼女の存在自体が幽霊のように見えてしまった、
(疲れてんのかな…?)
それもこれも皆この変な舞踏会の所為だと心の中で呟きながら少女に声をかけようとする、


「今晩は、今日は私の勝ちですね」
勝ち負けなど無いだろうが、そういう無邪気な言葉に思わず顔がほころぶ、
「あー…ああ、俺は負けたようだな」
昨日と同じ場所にデュランは座るが、少女は昨日とは違いデュランのすぐ隣に座った、遠くから聞こえる舞踏会の音楽を聴きながら昨日と同じように談笑する、
「気になる方…ですか」
話題は今日の午前中に起こった仲間との談笑になり、つい話の内容もかいつまんで話してしまう。
「ああ、まぁ、そう言われると助かる表現だな」
『好きな人』と表現されて揶揄されるよりはマシだろう、少女は肩をすくめて――おそらく薄く微笑んだだろう――頷いた、
「私も、そんな方がいらっしゃいます」
その言葉にデュランは少々固まる、まさか、と言う表情だが、少女にはその表情は見えない、
「貴方のように会ったのは一度きりです」
心なしか沈んだ声で少女は続けた、しかし、次の瞬間にはもう元に戻っていて――
「…いえ、2…3度ですねお会いするのは」
そう言ってデュランと眼を合わせる、
「…解ってんのか?」
もはや、謎々の答えが知りたい子供のように逸る気持ちを抑えてデュランは少女に笑いかける、
少女は手を顔へ持って行き頷いた、
「ええ、わかっていますわ」




「デュランさん」
「リース」





二人が仮面を外して相手の名を言うのはほぼ同時だった、


現れた顔は昔一度だけ見た顔、


そして、お互い惹かれた人物、


「…久し振り…だな?」
「ええ、本当に」
仮面を持ってお互い顔を見合わせる、数ヶ月ぶりになるだろう対面はそんなに緊張した空気ではなかった、
「いつ私だと?」
にこやかな笑顔で少女、リースはデュランに問いかける、
「午前中、さっき話た仲間がやってくる直前に空を見て」


あの時、空の色でリースを連想し、金髪碧眼は他にもいるだろうと諦めた時、シャルロットが来て、その目の色はリースとは微妙に異なる色だったから確信した。
「あんたの目、綺麗な空の色と同じだもんな」


そういうリースは?と逆に訊ねるとリースはうつむき加減で答えた。
「…今日、英雄王様とご対面しまして、その帰り兵士から盗み聞きを」
「昨日、参加した方々全員と言葉を交わしましたが、貴方らしき人はいなかったので」
要するに消去法で昨日ここであった人物がデュランだと割り出したのだろう、流石は王女、参加者全員と話をしたのかと感心する。



「さっさと付けねぇと、ルール違反だな」
仮面舞踏会なのだから舞踏会中は仮面を外さないのがルールだ、はっとしてリースは慌てて仮面を被ろうとする、
「人の気配ないし、別に良いか」
からんと乾いた音がして仮面が落ちる、それを見たリースも仮面を脇に置いた、


お互い相手に寄りかかり、いつの間にかつないだ手は離れなくて、離せなくて。

「…ずっと、会いたかったです」

恋焦がれる気持ちは相手を好きなんだと再確認させる。

「俺も、それこそ仲間にからかわれるくらいにな」

今度は離れたくなくてずっと静かに手をつないでいた。










栞語録
デュラリーvvvvですよ!!いや、デュラリー今別の話を書いていて、行き詰った+このネタが浮かんだ所為で突発的に書いてます。
手ぇ繋ぐだけ?!とお思いのデュラリスト様、すみませんこれが精一杯です、










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