火水

そう簡単には相容れぬ

お互いに焦がれ

己を呪う

そして相手を

恋い慕う















「あっつー!」
「なら来るなってんだろ?!」
「しゃーないやん、逢いたいんやし」
いつも通りの明るい応酬、
「それともあんさんがうっとこ来てくれはるん?」
無理は承知やった、彼があないなとこ、来られる訳ないやん。
ウチは水があればそれでええ、水を伝って移動できるし、
せやけど彼はやたら寒い所には行けへん、
たとえばウチが住んどるとこ。
「…お前が来いっつたらな」
「は…?!」
思っていた答えとちゃうからツッコミきれんかった、サラマンダの阿呆。
「でもお前なら来いっつー前に来るから問題ないだろ」
「…ッ…!」
図星、ちょお悔しい、
「そうだ、ちょっと水の力で雨降らさせてくれよ、ここら辺もう二月も雨が降らなくってなー!」
図星で真っ赤なウチに追い討ちをかける、ワザとや…絶対にワザとやっておる、
いつも笑顔ではきはきしてるから気付きにくいんやけど、ウチくらい付き合いが長ければ嫌でも判る。
でも、やっぱ好いたやつの頼みは断れん、人が関わってるとなればなおさらや。
「しゃぁないな、貸し一つやで?」
そう言って雨を降らせる、天気を操るんは流石に無理やけど、ちょお雨降らすんは出来た。
でも彼は水に弱い、だからウチが雨降らす前にとっとと非難しよってた、
「こら!勝手に逃げんなや」
サラマンダが駆け寄って雨宿りした所へウチも向かう、
「しかたねーだろっ!」
そりゃーそうだ、ウチも彼の近くで雨宿りする、
近く…と言ってもまだ45cmほど離れている、これがうちらの『ぎりぎり』やった。
あんまし近づきすぎると彼が、そしてウチがお互いを拒否してまう、
そういう体の創りなのだ、そういう物を司ってるんや、
しゃぁない…ケド…寂しいんは確かや…
雨が止んだ、村人達はがっかりしながらようやくそれぞれの役割に戻る、
まぁ、そんながっかりすんなや、またいつか降らせたるし。
「止んだなーありがとよ」
明るい彼の笑顔は眩しかった。
「なぁサラマンダ?」
ウチはちょっとだけ、彼に近づく。
「あ?何だよウンディーネ」
不思議そうに彼はうっとこを見る。


「あとちょっとだけでええ、近づいてもええ?」


その時のウチん表情はかなり切羽詰ったものに見えたらしい、
彼がかなりうろたえとるから何となくわかった事やった。
「お…オイ…何冗談言ってんだよ…」
彼は冗談で済ませられると思ったらしい、ちょお酷いんちゃう?
ウチは…こう見えて本気で話しとんのやで?
「ウチはそないな冗談つかへんよ、ただ、もうちょっとだけ近づきたかっただけやもん」
あ…しもた、泣きそうやん自分。こりゃー彼んとこ困らせるわ、
そんなん嫌やし…逃げるか…
走り出したら止まらへんかった。
涙も、
足も、
彼はやっぱし追いかけてくる、思うた通り。
元々足に自信なんてない、いっつも人魚姿で宙に浮いとったから走る機会なんてない。
一方彼はばりばり体育会系、暇さえあれば身体を動かしてる…そんなんやから…
あっという間に先を越されて前に立たれた。
先に行けないから仕方無しに止まる。
「悪かった!」
こういう風に素直に謝るとこ、嫌いやないで、むしろ好きや。
好きやのに…触れ合う事が叶わん…
「どうして…」
「どうして…手を掴んで止められないんだろうな」
ウチん言葉遮って彼が話す、人の台詞遮るんはウチの専売特許なんに。
「近づきてぇって思うのはお前だけじゃねぇんだよ!」
堰を切ったように彼は話し始める、ウチでも話に割り込めへん。
「身体がお互いを拒むんだろ?でもな、解っててもな俺はお前に嫌われてんじゃないかって思うんだよ」
それはウチもおもっとった、拒むんは身体、せやけどそれを意識は知らない、
やから相手が自分を拒んだように錯覚してしまう、
「俺は近づくのが怖いんだよ!」
「ウチだってそうや!」
言ったのはほとんど同じやった、彼は唖然とする。
「うちかて怖い!けどな、それよりも望みが大きすぎるんや!」
ほんまの事やった、日に日に…好きって思いと同じくらいにそう願うようになっとった。
「…じゃー近づくか?」
彼が呟く。
「…うん、文句はナシやで…」

怖い…けど、

あの人に触れたい、
 
本当に、
 
願いは…
 
 
 
それだけ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コメント後書き
のろこ様に捧げます、精霊ショートストーリーです、
登場精霊少ないですね…すみません、その上短い…
45cm以内って細かいですが、
昔、本で人間同士の関係を距離にすると恋人同士は45cm以内だと書いてありました(確か)
ネタはそこからです;
のろこ様が気に入ってくだされば幸いです。











栞語録
相互リンク記念にのろこ様に捧げた小説、
この後、五行思想を復習して火v木も良いなぁと思う朔神さん。
デュラアンを書いてるような錯覚に陥った作品だったりします。意外と新鮮…vv
目指すは進境開拓地!!(どこだよ…)


(どうでも良いけど、精霊話って全部黒背景なのな…;;)






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