火木







ここは植物が育たない、乾いたさびしい土地、だからだろうか?
あの森に住む緑に恵まれた少女に惹かれるのは。
一度、聖剣の勇者の中にいた時に行った事があるその森は日の光が遮断されるほど生い茂っていた。俺のいた所は遮るほどのものなんて切り立った崖の真下くらいだから驚いたのを覚えている。
「なぁ、それなんて言うか知っとるん?」
友人以上恋人未満、と言う相性の悪さと反比例して仲の良い水の乙女、ウンディーネ――正直、乙女って程女らしくない――が面白そうに尋ねてきた、俺は素直に首を横に振る。すると大げさに溜息をついたウンディーネはニヤニヤと笑ってからかい口調で答えた。
「恋の病って言うんやで?きゃー『ろまんちっく』やわぁ」
『サラマンダーにはにあわへんなぁ』と続けて言う、ムカつくのでツッコミをしたい所だが、相性の悪さゆえ相手に触れる事はかなわない。第一ツッコミを入れたところで『そこはそうやない』とか何とか言ってあっという間にウンディーネはお笑い師範に早変わりしてしまうだろう。
「なぁ、何で行かへんの?」
「…主語言え!どこに行く事を聞いてんだよ?」
「だから、ドリアードんとこ」
木の少女、ドリアードが出た所で俺は一瞬頭が空っぽになる、いつもそうだ、名前を聞くとその場で動けなくなる。
「…俺が行ったら燃えるだろうが」
気を取り直して率直に言い直す、あの時は勇者の中にいたから行けたが、今度はそうもいかないだろう、彼女のあの森に俺の火の気が近づいたらたちまち燃えてしまう、近づきたくとも近づけない。ウンディーネと同じ状況だがこちらの方がずっと辛い。
軽く溜息をつくと、ウンディーネもそれに続いて溜息をついた、俺はまた何か呆れさせるような事をいってしまったのだろうか?
「アホ! 火と木の相性は別の思想じゃバツグンや!」
俺と違い、ウンディーネは光の子供、ウィル・オ・ウィスプの住まう光の神殿にも出入りしている所為かやけに知識は豊富だったりする。俺が理解不能でいる所をウンディーネは更に一気にまくし立てた。こいつの言葉は独特すぎて早口は聞き取りにくい。
「なんやよう知らんけどな、むかーしあった別の思想じゃ『木は火を生ずる』とか何とか言うて、相性良かったんやて、その名残で今も相性はいいはずやで?」
たぶんここまですらすら言って述べられるのはウィル・オ・ウィスプに聞かされた事を受け売りで言ってるのだろう。そうでもなければウンディーネが真面目な話をここまで長く話せるはずがない。
「…それでもまだ会いにいかへんの?」
思い切り睨み付けながら更に俺を追い詰める、これじゃもう脅迫だ。俺は両手を挙げて降参した。
「解った。…行く」
俺のその言葉を待っていましたとばかりに更にウンディーネはにやりと笑い、ぱちんと景気良く指を鳴らした。
「おっしゃ!ジン!うちの勝ちやで!」
ジン、とそう呼ばれて出てきたのは風の男、ジン、要するにこの二人で賭けをしていたと言う訳か、
「ウンディーネは強すぎダスー」
残念そうな表情で風に乗ってふわりと巨漢の男が現れる、あの外見で体重はほとんどないというのだから怖いものだ。ウンディーネは俺の背中を押した。
「さっ、行け」
命令に近い勧めで俺はジンにつかまる、すると同じく俺の体もふわりと浮いた、気味の悪い浮遊感だ。そのまま風に乗り飛び立とうとする矢先、ウンディーネが大声で叫んだ。
「因みになー! うちら水と火ぃは別の思想でも相性最悪なんやてー!」
それなのになぜか仲が良いままでいられるのはやはりお互い惹かれる何かがあるからなのだろう。







「…って事で!賭けの勝者はうちとルナちゃんな!」
月の塔にてやってきたウンディーネがルナの隣に座りながら祝杯を挙げる、その場にいるのは火と木以外の精霊全員、この場所は誰も苦手としないので良く集う場所となる。
「ちょいと、ワシも『会いに行く』じゃったぞぃ!」
不服そうに土の老人、ノームが手を上げ意思表示をする、ウンディーネとノームは祭り好きなのでなんでも楽しい事の方に賭けがちだ。ルナはと言うとちょっと理由が知れない。
「ルナちゃんはなんでそっちに賭けたんすか?」
悔しそうにウィル・オ・ウィスプが呟く、自分でウンディ−ネに思想を話したくせに彼は『会いに行かない』に賭けていた。ルナはちょっとだけはにかみながら答えた。
「だって好きな人いたら会いたいっ!って思うじゃない」
当たり前の無邪気な言葉にウンディーネはルナに抱きつく、
「そやね! あ〜ルナちゃん可愛いなぁ!」
どうやらルナの発言が気に入ったようだ、アルコールは入っていないくせにテンションが高まりつつある、脳内麻薬でもフル稼働で出してるのだろうか?
「今頃どうしてるダスかね〜?」
送り届けたジンは二人の再会の様子を思い出しながら呟く、最後まで見てしまった分続きが気になるようだ。ルナがジンの言葉にはっとしていつも持っている珠を取り出した。
「見たいなら見れるよ?今は夜だから月が二人を照らしてたら…」
月の照らすところなら珠に映し出すことが出来る、ルナが最近自力で発明した技の一つでいうなれば月を利用した千里眼と言うところだろう。だが、それを団体より少し離れて様子を見ていた闇の人間、シェイドが止めた。
「止めておけ、覗き見を快いと思うやつなどおらんだろう」
シェイドの言葉は普段から少ない分、的確な事を言う、ルナはあっと呟いてうなだれた、自分で想像してみたらしい。
「…うん、ごめんね…」
シェイドとジンの両方に誤るが、答えはジンしか返ってこなかった。
「大丈夫っすよ、オイラも覗き見は嫌っすからね」
「ありがとうジンさん」
誤った矢先にぱあっと笑顔になる、外見が子供のウィル・オ・ウィスプよりよっぽど子供らしい。
「にしてもシェイドは冷たいなぁ」
ぶつくさ言いながらウンディーネは喧騒から更に遠ざかるように離れていったシェイドを見ながら呟く、
「あいつには協調性ってもんがない!」
「でも優しいよ?」
首をかしげながらルナが不思議そうにウンディーネに言う、ウンディーネは溜息をついて呆れた声を出した。
「…やっぱ一緒にいるもん同士の意思の疎通にはかなわんなぁ」






一緒にいなくとも『会いたい』と思ったのは同じだったサラマンダーとドリアードには聞こえない言葉である。



















栞語録
すみません、ただいまちょっとマイブームな火v木です;その割には短い…
現在、関西出身の友人がいるのでそやつの言葉を耳で聞いてみたらアクセントが違うだけで文章であらわせば標準語とだいたい似てると気づきました。聖剣で大阪弁を話すのは彼女だけなのでたぶん、大阪の方言は使わないだろうな〜と思ってるんですがどうでしょう?
前回に引き続きまた擬人化精霊の新しい必殺技が…!超人化してくなぁ…(遠い目)











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