ゆらゆらと漂う波…
ゆらゆらとその波に映る月…

揺らめく…感情…

あれからどれほどの時が流れたろう?

まだ僅かの時しか経っていない様にも、気の遠くなるほど経った様な気もする。
鮮明な記憶は漂ううちに次第に不鮮明になっていった、
だが、一つだけ今でも鮮明に残るもの…

彼女の笑顔…

なぜ不鮮明になっていく記憶の中、彼女だけがはっきりと色を帯びているのかが解らない、
解る事と言えば、その鮮明な色がいつまでも色あせないで欲しいと思う事だけだ。
いつかまた彼女の声を聞こう、
彼女の姿を目にしよう、
いつになるかは不明だが…

必ず逢いに行こう。





      闇月2



フェアリーが新たなマナの女神となった。
そして聖剣の勇者は各々が帰る場所へと帰っていった。
精霊は再び目覚める。

マナストーンのない世界に。


月夜の森。
夜、月の光を浴び、花が咲くように一人の少女が目覚める。
「ん…?」
かわいらしい仕草で目をこすりながら少女はゆっくりと起き上がった。後ろには羽がついている。
「あれ…?わたし、確か…」
少女は鮮明になっていく頭でそれまでの事を思い出す。

確か聖剣の勇者らと共に行動し、そして扉を開くために協力した。

そして…どうなった…?





「マナがないな」
「シェイド?!」
闇から姿を作るように一人の青年が少女の前に姿を見せる。
少女もマナがないのはわかっていた、いつもより力がないのだ。
「…なにがあったか…わかった」
「思い出したか、ルナ」
たった今、目覚めた瞬間に己の司る力が全てを教えてくれたのだ。
「でもなんでこの姿なのかわからないの」
『この姿』と言うのはそれまでの小さな浮遊する姿ではなく、普通の人間のように大地に足をつけている姿の事だ。なぜ人の形をしているのか少女にはわからなかった。
「私もわからん、だが、あの小さい姿でもマナが凝縮されていたからな、マナがない以上人間に近しい姿として復活したのだろう」
マナがない分、あの小さい姿に戻る事はない、ずっと『人間』に近しい姿のままなのだ。その証拠に少女の背には薄い羽が4枚ついていた。
「中途半端ぁ…」
溜息をついて少女は呟く。青年はと言うと首から提げている目をのぞけばまるきり人間そのものだ、
「ねぇわたしたちがここにいるって事は…」
少女はふと思った事を青年に問いかける。
「他の奴等も復活したな」
青年は少女が期待したとおり少女の言葉尻から話を続ける。
「そっかー良かった」
少女は安心して月を見上げる、月夜の森はずっと夜が続く森なので今が昼なのか夜なのか全くわからない。


「…ねぇ、シェイドはどうしてここに…?」
しばらくの沈黙のうち、その沈黙を破ろうと少女は青年に問いかける、青年が復活するなら自分と同じくマナストーンのあった近くだと思っていたのだ、それがなぜ自分の傍なのか、嬉しく思いながらも疑問に思ったので迷わず口にしてみる。
「ここが一番闇の力があるからな、おそらくその所為だろう」
青年はそっけなく答える。少女にはその答えが何よりも嬉しかった。
闇を司る青年の事だ、常に夜で闇に包まれたこの森で復活を遂げても不思議ではない。
「じゃーここにいるんだねっ?」
少女は嬉しそうな笑顔で青年に確認する、青年は気圧されながらも頷いた。
「やったぁー!」





その笑顔は鮮明に残る彼女の笑顔とダブる。





忘れないでいようとしたその笑顔、相変わらずの笑顔だった。





それはまるで月の光のように鮮やかで、色のない世界を彩る。






「みんなもそうだけど今まで一人でマナストーンの傍にいたからね、嬉しいな」
精霊はみなマナストーンの傍に生きていた、だから二人以上と言う時間が極端に少ない、青年のような人間性を持つものなら平気だろうが、少女から見れば退屈なものでしかなかった。
「他の皆も嬉しい事があるといいなー」
いつの間にか二人は少女が住んでいた月読みの塔を目指して歩き始める、丁度月が出ている方角だった。
「そだ!今度遊びにいこうよ!勇者さんたちのおかげで地理に詳しくなれたし!」
少女が少し後ろを歩く青年へ振り返って話しかける、その頭上には月、まさしく月の精霊そのものだった。
「…いや、私はここから出る事ができないだろう」
「なんで?!」
ようやく久々に発した青年の言葉を少女は問いただす、
「私が復活したのはほかのどこでもなくここだ、この森を選ばなければならない位私に力は残っていない」
「あ…!」
他の精霊なら各々が住んでいた場所で復活を遂げているだろう、しかし青年だけはこの場所でなくてはならなかったのだ、ここから抜け出せて自由でいられる保証はない。
少女は不自由な青年を思ってか頭をたれ、無言になる。


「…だから外はお前が見てこい、そして私に話してくれ」
このままでは少女も森から一歩も外に出ようとしないだろう、そのためにあえて青年は少女に頼み込む。せめて少女は自由であるように。



あの笑顔が色あせないように。



「…っ…!じゃ話す!たくさん見てくる!」
青年の言葉に後ろめたさが消えた少女は嬉しそうに話し出す。
「じゃー手始めにウィスプ君のところかな?ドリアードのところもよさそう…!」
早速少女は行き先について悩んでいる。そんな姿を見ながら青年は少女にわからないように微笑んだ。







私はもう逢えただけで十分だ。














あの長い長い航海の中でも色あせなかった彼女。
これからも長い時間、色あせないでいてくれる様――…



















栞語録

闇月2話目ーv
いろいろ設定を作ってうちの精霊は多分こんな理由で擬人化してるんですよ。
半分人間半分マナみたいな。
説明もかねて書いてみたり…その所為か少し説明調…反省。






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