火水光金



ルナちゃんが、慌てて出てきた、



顔を真っ赤にさせて。



きょとんとしとるウチに抱きついて酷く混乱しとる。
喧嘩が悪化したんかな?
そう思とったら、ふいに顔を上げて困ったような表情をさせた。
ああ、ちゃう。ちゃうわこりゃ。
すぐに仲直りをしたのだと気づいて安心した、と同時に混乱するなんて純情やなぁとうらやましく思た。

混乱しとるままのルナちゃんを何とか落ち着かせてシェイドと何があったのかうちらしく聞き出す。


ああ、キス、したんか。



そか…



うらやましなぁ。





うちらなんて…近づけへんもんなぁ?





『ユメデアイマショウ』





「いらっしゃい、どーしたッス?」
「や…なんでも」
笑顔で出迎えるウィスプにまさか落ち込んでるとも言えんから誤魔化して持ってきたお土産を手渡す。
ウィスプはそれをもらって喜んで「お茶にする」と奥へ駆け込んでった。動作は全く子供らしいが、あれで精霊中一番の知恵を持っとる恐ろしいガキやわ。
「あー書斎、おるからな」
目的はたった一つ、いまさらやけど、すがりたいたった一つの望み。ウィスプの遠くで解ったと言う返事が聞こえた。

ウィスプの住みか、光の古代遺跡にはもう何度も来とるから書斎までの道は覚えきってしまった。
遺跡自体、古くて通れんとことこかちょっと迷いやすなっとるけど、慣れてしまった。
ウィスプやルナちゃんとこみたいに水辺がすぐ傍にあるところにいる仲間には会いやすい、うちが水を伝って移動するから頭を出したらもう目的地やからな。
逆にジンやドリアードんとこは水場が少し遠いからちょお歩くのが面倒。
そして、ヤツの住みかなんて言語道断!や、あそこは近づいただけで気絶したくなる。

だから、うちから遊びに行けへんから毎日、毎日、次に会う予定を決めてから別れている。
女々しいけどな、けどな…そうでもせんと会えへんのよ。

「…いらっしゃい」
「っわぁお!」
書斎の一歩手前で歓迎の言葉を聞いてどきりとする、振り向けばそこにはルナちゃんそっくりの女の子…
アウラちゃんや…
属性はウィスプ曰く「金」でルナちゃんと「同じ」ものらしいけど…
はっきりいってこの子の存在意義がよくわからん。仲良うしたいけどもむこうはルナちゃんとは正反対で無口で社交的やないし…
ちょお苦手…かなぁ…?
「邪魔しとるなー」
「そう…」
そういうと一緒に書斎に入ってきた、どうやらこの子も書斎に用事が会ったらしい。
しばらく無言、うう…人がおるのにしゃべらんっつーのはうちの性に合わんなぁ。
「どんな本を探してるの?」
「え…あ…」
手を彷徨わせているのは思想や神話の本が並べられている棚、どう誤魔化そうか…
「火と水の事?」
「――…!?」
正に悩んでいる事を言い当てられてどきりとする、どうしてこの子に見透かされたんやろ?
どぎまぎしとると向こうは勝手に話を進めてきた。


…もう、それで決定らしいな…ま、外れてはおらんけど。


「火と水はやっぱり根本的に合わないわ、どの神話や思想を見ても…そう」
淡々と下す鉄槌はもろいうちの心に直にダメージがくる、ああ、アカン。この子の言い方、的を射すぎてる。
うち…元々涙腺ユルイから…も…
「じゃ…やっぱうちとサラは…」

つい、涙が一つポロリと目から落ちた。


や…ついな、つい…こう…


このままずっと、触れ合う事もできんのかーって思ったら、な…





「……」
アウラはただじいとうちを見てたかと思うと急に踵を返して書斎を出て行った。
呆れられたかーと思たらすぐに戻ってきた。なにしに外にいったんやろ?

「おかしい」


なにが?そんな風に聞き返す気なんて起きん。
「…わたしの世界のあなた達二人はもっと幸せそうに一緒にいた」
そうや、この子、別の世界からきたって…
「どういうことや…?」
明らかに今、彼女はうちとサラの事を言った。
しかもこっちじゃ触れられんのにそっちの世界になったら一緒やて?
それは、本当なんか?
本当…なんか…?
「なんで…うちらだけ…」

「だから、おかしい、他に相反する精霊たちはそんな拒否反応起こしていないのに」

…言われればそうや、
ジンとノームも、
ドリアードもルナも、
ウィスプもシェイドも…
対で相反する属性だけれど、うちらみたいに拒否反応はない、みんなフツーに触れ合えとる。
でも…それはうちらが特別対極に位置するから…
「光と闇はあなた達以上に対極」
またも見透かされたみたいにずばりと物怖じもせずに言う、度胸あるなぁこの子。


「ねぇ、どうして?」


ずいとうちに近づいて、見上げて、真っ直ぐな目で問いかける。
ああ、ルナちゃんと正反対の性格しとるくせにこういう眼ぇだけは本当同じやなぁ。
「そんな事…うちに言われてもわからん…」
強気に出たくても、この子の眼力の前じゃ無力だ、うちは咄嗟に踵を返して書斎を出る。
「あ、ウンディーネ」
「ごめん、帰るわ」
トレイを持って入口に立っているウィスプに短くそう伝えて足早にココを去る。
ここに手がかりは無い、希望なんてない。










あったのは特別扱いの絶望。
















  

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